今昔狐物語

母性本能をくすぐられたちよは、無意識に飛牙の頭を撫でていた。

よしよし。

いい子いい子。

元気出せ。


そんな思いを込めて優しく撫でる。


「な!?何をする!」

「あっ!ごめんなさい!」


お互いに慌てた。

飛牙は顔が真っ赤だったし、ちよも自分のしたことに気づいて同じように頬を染めた。


恥ずかしさを紛らわせるべく魚を食べようとしたちよだったが、飛牙の言葉にその行動は中断された。


「お、驚いたが…ちよの手、心地好かった」

赤くなりながら喋る飛牙は、どことなく子供っぽい。

ちよはもう一度、彼の頭を撫でた。

今度は無意識ではない。

ちゃんとした自分の意思だ。


「お前、またっ!」

「心地好かったなら、いいでしょう?」


 
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