あなたの心理テスト(ホラー)
 ―――――異常だ。雰囲気も、臭いも。


 努は男子トイレから漂う異常な雰囲気に圧倒されている。


男子トイレから数歩離れた今も、あの鼻にくる臭いが努の鼻には残っていた。


一度嗅いだら忘れられない。


 しかし、この異常を見逃していいのだろうかと努は思った。


―――――もし、自分が見逃して後に大変なことになっていたら…。


 そう思うと、このまま見過ごすわけにはいかない。


努の本能が黄色信号を出していたが、そんなものは無視した。


何かあったときのために、もしものために。


そのために、努はもう1度トイレの様子を見ることにした。


 努は振り返り、トイレへ向かう。


 しかし、いざ向かおうとすると足が震え、うまく進めない。


数歩しか後退していないのだから、トイレへ戻るときもそれほど時間はいらない。


 なのに、努はかなりの時間をかけた。


それは努自身が長く感じたのか、実際に長く経っているのはわからない。


着実に1歩ずつ、前に進んだ。


トイレに近づけば近づくほどに、臭いが鼻にくる。


同時に、心臓の脈拍も早くなって、額には汗が。


どくん。


 1歩進む。


 危険信号が赤に染まる。


「ぅ…臭……ぃ」


 トイレの入り口に足を踏み入れる。


立ち入り禁止の場所に入っていくような危険さと恐怖が努を襲う。


何かがおかしいのは誰もが感じるほどの異常なオーラ。


ゆらゆらとゆらめく錯覚に襲われ、吐き気がする。


 そしてさっきと変わらない、大きい鏡に努は手をつく。


もう1人の努も同じポーズをした。


 臭いは個室からするようだった。


努は鏡から手を離し、個室を見ていく。


個室は全部で4つあり、その中のどれかが『原因』。


高鳴る胸を静め、


「……!!」


がちゃ。


努は1つめの個室のドアを開けた。
< 46 / 52 >

この作品をシェア

pagetop