恋愛メンテナンス
しかし、コイツの着信は長いし、しつこいなぁ。

私は無言で着信が途切れるのを、見つめながら待つ。

結婚なんて、お断り!

私は私の満足する人生をトコトン、満喫するんだから!

「としこっち~♪」

待ち合わせ場所に現れたモモちゃんに、私も手を振る。

「モモちゃ~ん♪」

私とモモちゃんは今から、作戦会議で喫茶店へと向かう。

鳴り止まぬスマホをポイッとカバンに投げ込んで、知らん顔。

「今日は何席くらい回ろうねぇ?」

「カッコイイ人が居るといいねぇ~♪」

モモちゃんは私より3歳年上。

彼女も最近暴力彼氏と別れたばかり。

そして私と同じく、恋に毎度振り回されて苦しいけれど、楽しんでる恋多き女の子なの。

9時から本格的に街コンがスタートする。

乾杯やって、少しだけ目の前の男とお喋りをして席を移動する。

サラリーマンかぁ…。

高いネクタイだのブランドのスーツだの自慢話ばっか。

「ホストみた~い!」

好みじゃないからドキツイ突っ込みで蹴落としてやる。

その尖った鼻を、ここぞとばかりに折ってやる。

可愛いモモちゃんを狙うオオカミの視線を、私は誰よりも察知する。

「ねぇ、としこっちはどんな男が好みなのぉ?」

「え?私ですかぁ?」

2組目に仲良くなった男の1人が私に質問する。

「俺たちは製造業なんだけど、女の子にどうもモテなくて」

「サラリーマンって収入も安定してるから、そっちにみんな取られちゃうんだよなぁ」

困った顔して何を私に聞くのかと思いきや、

「私はサラリーマンがいいなぁ。営業マンとか」

おおっ!さすがモモちゃん!

可愛いだけあって、イキナリそこかい!?

「私はサラリーマンの元彼で、嫌な思いしたから、もっと人の役に立つ仕事してる人に憧れるかなぁ」

嘘のない人がいい。

外見の豊さよりも、もっと人の温かみを感じる人がいい。

だからってデブも性格悪い奴も、勘弁だけど。

「製造業ってラインなんだけどね、どうしても出逢いがなくってさぁ。俺たちも一生独身貴族になっちゃうのかなぁって不安になるよなぁ?」

「金も受け入れる心の広さも、年の甲ってやつであるのになぁ」

コイツらも、結局結婚したいんかい…。

結婚の話になると、私は何だかとても気分が悪くなる。

だって、結婚出来ない男の愚痴を聞かされるって事は、元彼の愚痴を聞くのと同じだから。

「じゃあ、私たちそろそろ、すいませ~ん…」

席を移動して、次の場所へと向かう。

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