恋愛メンテナンス
そんな普通の話なんて、どうでもいい。

そんな誰にでも簡単に手に入る幸せだなんて、本当の幸せじゃない。

私には間違いなく、それが確かなんだって思える。

それよりも、恋したいな…。

早く新しい彼氏でも見つけて、その人に夢中になりたい。

結婚だとか、元彼の事、会社での出来事も忘れたい。

家に居たくない…。

そうメールしたら、すぐに私の元に駆け付けてくれる、そんな王子様が突然目の前に現れてくれたら、こんな銭湯で独り遅い時間に湯船に浸かる事もないのに…。

虚しいわ…。

少子化大国の日本に、子どもを授かっただけで、偉そうにデカイ態度でいる子持ちの主婦が嫌い。

でもそんな嫌な事、誰も分かってくれない。

仲の良い独身の女の子だって、最終的には自分もそうなりたいと望んでいるから…。

言える訳ないよね、こんな話。

でも世の中ねぇ、変わるよ。

どんどん働く女性が地位も名誉もお金も、手に入れていく時代に変わっていくの。

そのうち子どもなんて、欲しくなった時に、男なんかとセックスしなくても、精子バンクで人工受精だの代理出産して産む時代もやってくんのよ。

だいたい育てられなかった時の赤ちゃんポストだって、今時有るくらいなんだから!

何が起こるか分からない時代なんだから!

……。

意地なんて張ってるんじゃない。

私の本音なんだもん。

強がりじゃないよ。

本当に嫌なんだもん。

自分を大切に扱ってあげたいだけ…。

なるべくストレスを抱えない社会で環境で、生活したいだけ。

……。

世の中に適応できない自分は、やっぱり苦しくて涙が出る。

良かった…涙、ポロポロ流しても湯船の中に消えていく。

こんな事で、泣いちゃうだなんて…。

私、相当病んでるかも…。

10時過ぎると、アパートは静かなはず。

私は頭を乾かして、着替えを済ませて女湯の扉を閉めた。

すると、前をパタパタと2歳くらいの男の子が走ったと同時に、思いっきりコケた。

バタン…!

うわぁぁっ?!

びっくりしたぁ…って、この子動きが止まってるけど大丈夫なのか?

「…うっ…うぅっ…うっ…うぐぇ…」

静かに横に倒れたまま、泣きわめく手前の姿勢を取っていた。

私は慌てて、しゃがんで手を差し伸べた。

「痛かったねぇ?大丈夫?ほれ、泣くな泣くな…」

声を掛けられてホッとしたのか、メチャメチャでかい声で泣きわめいた。

「うにゃーーっ!うにゃぁーーっ!」

なんだ、コイツ。

猫みたいに泣くなぁ。

「うんにゃぁーーっ!!」

小さいながらにして、たぶんコケた事が恥ずかしくて、しばらくうつ伏せたまま動かなかったんじゃないのかなぁ。

分かるな、その気持ち。














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