恋愛メンテナンス
元彼の背後に見えたのは、永田さん。

私だけを見てる?…もしかして…。

ゆっくりとこっちに歩いて来て、元彼の肩を掴んだ。

「またあんたか。いい加減にしねぇとマジに俺、怒るぜ?」

俯きがてら、視線を上げて睨み付けた。

「そうか、あんたがとしこを、こんな清掃会社へと誘ったんだな?」

元彼も吠える。

「そうだけど。だから何?」

違うのに、あっさり認めた永田さん。

永田さんは腕組みをして、元彼を一気に見下した。

冷たい視線で、

「未練がましく、としことしこって。今の彼氏はこの俺だ。清掃会社も、おたくらの会社と同じで、人のためにプライド持ってやってんだ。汚ねぇ仕事みたく、簡単に言って貰っちゃ困るなぁ」

バシッと毒、いやまともな言葉を真っ直ぐに叩き付ける。

若い男の子2人も、永田さんの隣りで、ガン付けてる。

そりゃあ、そうだよね。

プライドを持ってる仕事、けなされたんだから。

「永田さん、もう帰りたい。早く帰りたい…」

私は永田さんの背中を引っ張った。

「そうだな、帰ろうか」

私の肩にまた手を回して、車に乗り込む。

若い男の子2人も、捨てセリフで元彼に言った。

「清掃会社って結構、忙しいんっすよね」

「師走の大掃除ってやつで。いやぁ儲かる仕事だ」

「ありがたや、ありがたや」

2人も車に乗り込んで、永田さんの運転ですぐに営業所に戻った。

そして、

「副所長?いつから美空さんとデキてんですか?」

「ちゃっかりしてるなぁ、副所長」

後ろから、ひやかされて永田さんは素直に答えた。

「あんなもん、嘘に決まってんだろ…」

私は永田さんを見て。

…やっぱり、嘘なんだ。

ガックシ。(↓)
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