恋愛メンテナンス
結婚を仄めかして、私を束縛して自由を奪おうとする男は要らないのよ!

「嫌だよ!おまえじゃなきゃ、俺が嫌なんだって!」

無理矢理抱き締めようとするから、私も無理矢理抵抗して離れようとする。

「止めてって!」

「諦められないんだ!女々しいと思われてもいい!恥を承知で来てる俺の気持ち、理解してくれよ!」

「知らない!人の気持ちなんてどうでもいい!とにかく止めて!」

顔を近付けて、無理矢理頬擦りをされる。

アパートの前には、違うアパートもある。

朝はみんな家の事をやっていて、こんな事されてるの丸見えじゃんよ。

しかも引っ越し屋の兄ちゃん二人は、トラックから荷物を運びながら、何気に私たちのやり取りを見て笑っている。

笑ってるくらいなら、助けろ!

本当に恥ずかしい!

「大きな声、出すの止めて!近所中の晒し者じゃない、こんなの!」

コイツのこのバカでかい声も、嫌いな要素の1つだったんだけど。

うるさい男は嫌いなの!

「分かった、分かったから!」

「えっ、ちょっ、ちょっと何すんの?」

両腕を後ろでキツく掴まれ、自分の車の助手席を開けられた。

…まさか?!

「車の中で話そう!ジックリ話そう!」

「止めてよね!嫌だってば!!」

「いいから!!」

いいからじゃねぇし!

監禁すんな!

すると、元彼の肩に手が掛かった。

…へ?

「…ん?」

私も元彼も、同時に動きが止まった。

「ちょっとあんたねぇ、俺の彼女に何してくれてんの?」

元彼は振り返り、私も身体を傾けて覗いた。

「俺の彼女?」

「あぁ、そうだけど。何か文句あんの?」

あぁっ?!

あぁぁーーーっ!!

私は瞳孔を開かせ、見つめるその先にいたのは…。

「ほら、おいで」

元彼を無視して、両手を差し出される。

もちろん私はその手にすぐ掴まった。

こないだの、銭湯で出逢った子連れの男だった。

「誰なの、コイツ」

親指を元彼へと立てて、チラッと睨み付けて、その男は言う。

「ごめんなさい、元彼なの」

演技しなきゃ。

「そう、だけどなおまえ、元彼とは言え、あんまりむやみに愛想振りまくもんじゃねぇぞ、分かったか?」

「は、はい…」

「こういう危ない目に結局合っちまうんだから、それはおまえの自業自得だよ?なぁっ?」

「うぅっ…」

その男はグッと私を寄せて、頭を撫ててくれた。

「てな訳で、俺たち現在進行系の恋人同士なんでねぇ。あんたも立派な社会人なんだから、終わった関係なのに、ウダウダ今更言ったりすんなよなぁ」

この男は、何となく状況を把握していたのだろうか。

上手く帳尻を合わせてくれていた。


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