キミが泣くまで、そばにいる


 呼吸を整え、こめかみから垂れる汗をぬぐった。

 思い出されるのは、アカツキの表情だ。

 あんなふうに焦ってる顔、見たことない。


 アカツキの様子を絶えず見守っていれば、何かわかるかもしれない。

 笑顔を使い分ける彼の心情を、理解できるかもしれない。

 そう思ったのに、全然見えてこない。

 アカツキの抱えているものが、わからない。


 生徒たちがばらばらと帰っていく歩道の真ん中で、立ち尽くす。

「どこに、行ったの……?」

 結局、私には、何もできないの――?


「お前、あからさますぎ」

 背後で声がした。

「ただ追っかけ回してりゃいいってもんじゃねーんだよ、バカちィ」

 イチョウの葉からこぼれた太陽の光が、金色の髪をきらりと光らせた。


< 219 / 273 >

この作品をシェア

pagetop