性別「少年」属性「乙女」

窓ガラス

「命には別状ないそうだ。ゆっくり休みなさい。こんな時に、付いててやれなくて、すまない」


父さんが、ボクの腕にそっと手を置いて、言う。


そんなの、大丈夫だよ。
お盆で、今が一番忙しい時なのに。
入院してたら、ボク、手伝いも、食事の準備もできない。
あの広いお寺に、父さんをひとりぼっちにしてしまう。

「ごめんなさい、父さん。忙しい時なのに。ボク、頑張って早く退院するから。帰ったら、一生懸命お手伝いするから」

「いいから。うちのことは、なにも心配しなくていい。身体を治すことだけ考えなさい」

父さん。
ホントはずっと、父さんは優しかった。
だって、実の子じゃないボクを育ててくれて、跡継ぎにしようとしてくれた。
わかってた。
父さんがいつも、もっと男らしくなれって言ってたのは、ボクのことを心配してくれていたから。

わかっていたのに、ボクは、父さんをちょっと疎ましくさえ思ってた。
親不孝だったよね。
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