先生の「特別」にしてくださいっ!

気づかされる気持ち

いつもよりも三割減くらいの
速度で駅から歩き、
なんとかアパートまでたどり着く。

「ありがとうございました。」

そう言って、
滝野は握っていた手を離し、
鞄をくれと言うように更に手を伸ばしてきた。

「いや、部屋まで送る。」

「え?だから、家の前…」

「外階段上って、お前の部屋の中まで送る。
と言っているんだ!」

「えー…」

「"えー"じゃねえよ。
今更、
俺を部屋に入れたくないとか言うなよ?」

「でも、部屋片付いてないし。」

確かにこいつの部屋は
いつもそこそこ綺麗だけど、
今更何を言っているんだ?

「病人の部屋が片付いてないことに、
いちいち何も思わねえよ。」

こんな時まで
そんなこと気にしてんじゃねえ。

そう言うと俺は勝手に外階段を上り、
滝野の鞄から勝手に鍵を取り出して、
玄関を開けてしまった。
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