婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
「……七宝院の婚約者だったな。ちょうどいい、悪いがそのまま俺と一緒についてきてくれ」
「何故ですか?」
「……出発前、七宝院は体調を崩していたから」
今は薬が効いているみたいだが、大事を取って休ませた方がいいと思う。
淡々と紡がれる菅原様の言葉に反応した敬太様は、
驚いたような表情で「そうなのか?」と私の顔を覗き込んでくる。
私はそれを笑顔で誤魔化しながら
(余計な事言わないでよ菅原様の馬鹿ぁ!)
と心の中で絶叫したのだった……。