続・赤い流れ星




「ど…どうも…」

部屋に入ると、そこには見知らぬ中年の女性がいて、俺の方に向かって小さく頭を下げた。



「カズ、こちら、野々村美咲さんだ。」

マイケルがにこやかな顔で、その女性を紹介した。



「初めまして。
青木和彦です。」

その顔同様、野々村美咲という名前にもまるで覚えはなかった。
座ってはいたが、背が高いことは感じられた。
痩せ型で、伸びっぱなしの髪は一つに束ねられ、化粧っ気のない顔にメガネをかけ、地味な紺色のスーツを着ている……言ってみれば、一昔前の学校の先生みたいな人だった。



「さ、そろそろ始めるか。
今日は豆乳鍋にするからな。」

その人の素性も知らされないまま、食事が始まった。
マイケルは、用意された食材を慣れた手付きで鍋に放りこんでいく。
この女性はがマイケルやアッシュの彼女ではないことは間違いない。
年齢からしてもルックスからしても、それはありえない。
では、やはり仕事関係の人なのか?
それとも、野々村さんを家政婦さんにでも雇おうということなのか?
いや、それにしては様子がおかしい。
野々村さんは、なにか居心地の悪い様子で、何も言わず俯いている。
こんなことを言っては失礼だが、ここにいるのは若い外国人のイケメンの二人と俺で、野々村さんの雰囲気とはどうにも似合わない。
居心地が悪いのも当然だ。



「マイケル…
野々村さんは、どういう関係の方なんだ?
もう少し詳しく紹介してくれよ。」

その言葉に、マイケルはアッシュと顔を見合せて肩をすくめた。



「カズ…実はね、野々村さんはカズの分身なんだ…」

「分身って……あっ!」



俺は、マイケルが言わんとすることに気がついた。
分身…それはすなわち俺のブログのゴーストライターなのだと。
俺が、ゴーストライターを使う事に難色を示していたから、それでこんなことをして、俺に会わせたんだ。
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