青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。

ふたりきりの夏祭り



すっかり空は暗くなり、橙色の提灯が至る所に下げられている。

淡く光の灯ったそれが、祭りの雰囲気を一層際立たせた。


ーーカラン、カラン。


履き慣れない下駄で、緩やかな坂を歩く。

周りには浴衣を着た人がたくさんに行き交っていて、あたしは目を細めた。


………夏祭り。

普段は鈴虫が鳴くばかりの静かな時間帯だけど、今日は辺りが騒がしい。

盆踊りの音楽が、遠くから聞こえてくる。

祭り会場への道という、この優しくて少しばかり賑やかな空間で、あたしは足を止めた。

すぐそばの石垣の近くで、立ち止まる。

辺りに漂う浮ついた雰囲気にあてられて、あたしもなんだかウキウキしてきた。


「……みんな遅いなぁ……」


ここに待ち合わせるという約束の六時半から、もう十分ほど経っている。

携帯を取り出して、連絡が来ているか確認してみるけど、何もきていない。

…なんで誰も、来ないんだろ。

電話してみようかなぁ、とまた携帯を取り出したとき、突然携帯が震えた。


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