青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


屋上のある二階建てくらいのその建物に、人の気配はない。

驚いて見上げていると、大きな音と共に後ろで花火が上がった。


「…えっ、わぁ、始まった!」

「ここの屋上。そこに階段があるから、行こ。急げー」


トントンと慎也に背中を押され、鉄の錆びた階段へ早足で行った。

花火の上がる音と人々の歓声を聞きながら、カンカンと音を立てて階段を上がる。

最後の一段で、目の前にある鍵の壊れた格子の低い門を開けた。


ーードン。


屋上に足を置いたとき、同時に大きな赤い花火が夜空に広がった。


「……わぁ、キレー!」


河川敷で見るより、ずっと近い。

屋上にある柵も低いから、すごくよく見える。

ドン、ドンと続けて打ち上げられる花火を見上げて、あたしは目を輝かせた。


「すごい、すごい!超綺麗!」


浴衣を着ていることも忘れて、はしゃぐ。

途中で履き慣れない下駄でつまずいて、転びそうになった。

「わっ」

「麗奈っ」

慎也が慌てて、支えてくれる。

見上げると彼の顔がすぐ近くにあって、びっくりした。

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