青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


…お母さんの恋人は、とても優しい人だ。

どんなに私が嫌な態度をとっても、顔をしかめることなく『少しずつ、仲良くなっていけたらいいから』なんて言う。

少しだけ小太りで、ふんわりとした雰囲気をしている人。

今までのお母さんの恋人には、いなかったタイプ。

その隣で愛おしそうに目を細めるお母さんは、とても和やかで。


…本当に、好きなんだろうな。


そう、思った。

離婚したお父さんと違って、あの人はしっかりとした職にもついているみたいだから。

たぶんあの人と再婚したら、お母さんは水商売をやめるだろう。

…うん。

私は絶対に、邪魔できない。


けど、今朝の慎ちゃんの言葉が頭のなかに響いた。


『言いなよ、それ』


…言えないよ。

言えるわけ、ないよ。

息が詰まって苦しくなって、叫びそうになる。

隣のベランダへ、助けを求めてしまいたくなる。

でも、ダメ。

呼んだら、ダメ。


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