青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「…利乃?あんたどこ行って…利乃!?」
驚いて、私のもとへ駆け寄ってきてくれる。
何も言えずに泣きじゃくる私に、お母さんは困ったように背中をさするばかりで。
そのとき、ああ今の彼には、この手がないんだと思った。
ご両親が離婚して、慎ちゃんは家にひとりぼっちになって。
あの頃の私と、同じ。
すがるように慎ちゃんの手を求めた、あの頃の私と、同じなんだと。
それなのに私は、彼から離れようとしてる。
だって、どうしようもないじゃない。
私のわがままな想いなんか、誰も知らないほうがいい。
『…利乃ちゃんは慎也のこと、恋愛として好きなの?…友達として?』
…ねえ、トモくん。
それは絶対に、決めなきゃいけないことなの?
『好き』って気持ちに名前をつけなきゃいけないなんて、誰が決めたの。
私のこの想いに、名前なんかいらない。
誰にも言わないんだから、必要ない。
『そうやって何も言わずに嘘ついてさぁ!…ずるいんだよ、利乃はいつも』
そうだよ。
私、ずるいの。
逃げてばっかりの、最低な奴なの。
そんなこと、私がいちばんよく知ってる。