青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


…夏の香りはもう仄かになっていて、あんなにも強く私達を灼いていた太陽も、優しくなって。

あの頃、ずっと私達を包んでいた蝉の鳴き声も、もう遠くに聞こえる。


……夏の、終わり。

君との季節の、終わり。

私はもう一度、あの夏へ帰る。


『約束だよ』


ふたりでもう一度、手を繋ぐんだ。

そして今度は、お別れをしなきゃ。

手を離すために、手を繋がなきゃ。

あの頃、泣いていた私を抱きしめてくれた、慎ちゃんのように。


今度は私が、慎ちゃんを抱きしめるんだ。



『ちょっとくらい、本当の気持ち見せてよ。…ふたりきりなんか、ならない。…絶対、ならないよ』

『…行ってきて。俺らの気持ちごと、伝えてきて』


私達にはもう、大切な人がたくさんにいるから。


…寂しい寂しい、ふたりきりの夏。

置き去りにされた君を、今度は三人で助けに行くよ。





< 362 / 380 >

この作品をシェア

pagetop