Valentine Triangle

一瞬の間。

何か言いよどんでいる様子の高妻。

カウンター当番でもあって、休憩が1時からだったりするのかな、それとも何か用事があるのかな、そんなことを考えながら、香神が聞いた。

「あ、お忙しいですか?」


「今日は、お弁当を頼んであるんです」


言いにくそうに高妻が告げる。


「あ、そうですか」


香神が同じ職場にいた頃は、お弁当の日なんてなかったのに、間が悪かったと思った。

これも、朝一で予約を取りに来なかった、香神が悪いのだ。

香神はいつも、迷惑だったらとか、困らせたらとかそんなことばかりを考えてしまう。

負担にならないように、たまたまお昼に行くのをご一緒する、そういうのがいいと香神はわざと事前に連絡しなかったのだが、それが裏目に出てしまった。
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