花言葉を君に。~あふたーでぃず~


楓にぃにに指定された病院に着くと、メールした。


“今着いたよ。ロビーにいる。”


「ママー。ふぅ、病院初めて!」


「そうだね。ママもこの病院は初めて入ったよ。」


すぐに返信が来た。


“悪いけど、7階の742号室に来てくれる?”


742号室?


“了解。すぐ行くね。”


「ふぅ、行こ。」


ふぅの小さな手をとって、歩き出す。


エレベーターに乗っているときも、廊下を歩いているときも、胸騒ぎはずっとしていて。


なんか、苦しくなるくらいに・・・


742号室の前に立つと、爽やかな香りが漂ってきた。


この香り・・・


どこかで嗅いだことある気が・・・


扉を開けて中に入ると、楓にぃにの背中が見えた。


「楓にぃに!」


ふぅが楓にぃにに抱きつく。


「ふぅ。久しぶりだね。」


ふぅに見せる優しい表情が、あたしの心の中の楓にぃにの思い出をくすぐる。


あたしもきっとこんなふうに、楓にぃにと一緒にいた・・・


「紫苑。わざわざありがと。」


「あ、ううんっ。それで、ここは」


「紫苑・・・?」


純白のカーテンで仕切られた向こう。


微かに香る花の香り。


あたしの名前を呼ぶ、優しい男の人の声。


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