いつでも王子様
「だからといって、璃乃のことをあきらめるつもりはなかったんだ」
「ん?」
その日の晩、夕食の片づけを終えた私たちは、近所の神社に出かけた。
初夏の風が心地よい闇の中、遠くからお囃子の音が聞こえてくる。
今日は、近くの神社のお祭りで、たくさんの人たちが軽い足取りでそこへ向っている。
私と薫も、もうすぐ始まる花火を見ようと急いでいた。
私の手をぎゅっと握り、隣を歩く薫を見上げると。
「薫って、大人の男になっていたんだね」
思わずそう言ってしまうほど素敵な横顔がそこにあった。
「当たり前だろ?璃乃を手に入れるためのあらゆる努力が今の俺の魅力につながってるんだ。その辺の男どもには負けないくらい格好いいだろ」
「ふふっ。そうだね」
高校三年間、薫を避け続けていた時間がもったいなかったな、とため息を吐いた。
少年から男へと変化していく薫のそばにいて、少しずつ魅力を蓄えていく日々を見ていたかったと後悔してしまう。
薫の本心を知らなかったとはいえ、私の先走った思いが全てを狂わせてしまったのかもしれない。
自分の思いはちゃんと言葉にして問いかけなければいけない。
そんな当然のことに今頃気づくなんて。
次第に落ち込んでいく気持ちを持て余しながら、薫に手を引かれて歩いていると。
思い返すような薫の声が聞こえてきた。
「俺は、高校時代璃乃となかなか会えなかった時間、将来璃乃と一緒にいられるように自分を成長させる努力をしたんだ。母さんが流産を繰り返したことがきっかけだけど、遺伝子の研究をして、将来もその関係で仕事をしようと決めて。自分に自信も持てたし、もう璃乃を待てなかったし。一緒の大学に行けないのなら、一緒に暮らそうって決めたんだ」
「決めたって、そんな強引な」
「そう。強引でもなんでも、俺は璃乃と一緒に暮らすって決めたんだ。だから、璃乃の両親に頭を下げて、お願いしたんだ」
「そ、そうなんだ……」