天使ラビィの不思議な珠



「明日のお当番は、ヒロシくんです。じゃあ皆、お家の人がお迎えにくるまで、自由に遊んでいていいよ」


先生がそう言うと、おともだちはみんなブロックの周りに集まった。

ボクたちがいつも過ごす年中さんのお部屋の真ん中には、ブロックが広げてある。
みんなのお気に入りのおもちゃだからだ。

だけどボクは、そろそろとお部屋を抜け出し、隣の年長さんのクラスに入った。
そして本棚から、お気に入りの絵本をひっぱりだすんだ。


「これこれ」


前に短い間だけ来たおねぇちゃん先生が最後にくれた手作り絵本。
この世に一冊しかないんだよ。まるでお宝みたい。

ボクはワクワクしながらページをめくった。
手書きの絵本にはおねぇちゃん先生のまるっこいひらがなと、可愛いイラストが描いてある。


「えっと、……ある、ところに、よく、わらうお、んなのこの」


ボクはもうひらがなが読める。
凄いねって、みんな褒めてくれるよ?

だけど、自分で読んでいると、お母さんが読んでくれる時にみたいに、するすると読めない。


「いま、した。なまえは、ラビィ」


ふう、と息がでる。せっかくの可愛い絵も頭に入ってこない。
ひらがなを読むのが、精一杯。

全部覚えられたらいいのに。
先生に読んでもらったら、覚えられるかな。

ボクは、色々覚えるのも得意。
絵本なら、5回も読んだら覚えちゃえるんだ。

ボクは絵本を持って立ち上がり、読んでもらうために先生を探す。
でも先生、お迎えに来た誰かのお母さんと楽しそうにお話してる。


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