恋の糸がほどける前に

「……はぁ」


エレベーターで1階までおりて、外に出る。

今更ながらに、貴弘と雫先輩がキスしてるところを思い出してしまって、恥ずかしがるよりも、なんだか怒りが湧いてきた。


……あんなにかわいくて素敵な彼女がいるのに、どうしてもっと大事にしてあげないわけ?

いくらイトコだって言ったって。

私と貴弘との間に、特別な感情が本当に微塵もなくたって。

私が貴弘の部屋に泊まったり、仲良くしたりしたら、雫先輩は嫌だって思うに決まってる。

そんなの、ちょっと考えれば分かる事じゃん。



隣にいるべきなのも、隣にいたいと思うのも。

あいつにとっては私じゃないし、私にとってもあいつじゃない。


「……うん、やっぱり絶対内緒だ」


あんなデリカシーもない、彼女の気持ちも考えないようなやつに、好きな人なんて絶対教えないんだから……!


────もうすぐ夏が始まりそうな、夜空の下。


そんなことをかたく心に誓った私なのだった。

< 51 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop