ラストバージン
キノコのクリームパスタは濃厚なのにしつこくないし、サラダはこのお店の手作りだというレモンドレッシングの風味が良く、マルゲリータと生ハムの窯焼きピザはどちらも生地がモチモチしている。
オレンジジュースは搾り立てのような濃さで、チョコレートとストロベリーのジェラートもちょうどいい甘さ。


どれも本当に美味しくて、私が笑顔で「本当に美味しい」と繰り返し言う度に、榛名さんは安堵と喜びの笑みを零していた。


「どれも、本当に美味しかったです。今まで行ったイタリアンの中で、一番好きなお店になりそうです」

「良かった。イタリアンなんて無難過ぎるかと思っていたんですが、こんなに喜んで頂けて安心しました」

「ここ、よく来られるんですか?」

「いえ、前に一度来ただけです。その時に食べた料理がどれも美味しくて、店内も店員さんも雰囲気がいいので気に入って頂けるかと思って」

「すごく気に入りました。イタリアン好きの友達がいるので、今度はその友達とも来たいです」

「ぜひ連れて来てあげて下さい。あ、でも、結木さんは運転しないように」

「え?」


悪戯な微笑みを浮かべた榛名さんに一瞬目を小さく見開き、それから眉を寄せながら苦笑を零した。

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