ラストバージン
Count,03 焦燥と心構え
アラームを鳴らした目覚まし時計を止め、寝ぼけ眼のままスマホに手を伸ばす。
新着メールを知らせるディスプレイを指先でタップし、メール画面に飛んだ。


ようやくはっきりとした視界に入って来たのは、【おはよう】というシンプルな一言。
毎朝似たような内容のメールを送信して来るのは三週間前の婚活パーティーで出会った高田さんで、彼は毎日こまめにメールをくれるのだ。


【今日も一日頑張ろう】や【お疲れ様】に、ちょっとした出来事。
【お昼を食べ損ねた】とか、【差し入れで貰ったシュークリームが美味しかった】とか。


本当に他愛のない事ばかりだけれど、この三週間毎日欠かさずメールが届いている。


もちろん返事をしない訳にはいかないから、私も挨拶に何か一言を添えるようにしているけれど……。正直、こんなやり取りには何の魅力も感じない上に、メール無精の私には面倒にすら思えて来た。


そして、いかに高田さんに興味がないのかを日に日に思い知るばかりで、食事の誘いも仕事を理由に避け続けている。
彼には申し訳ないけれど、食事どころかフェードアウトも考えるようになっている程で、今はそれよりもいい方法が無いか模索しているところだった。

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