ラストバージン
主任ミーティングでは、ミーティングの纏め役となる司会が決められている。
月二回のうち、前半のミーティングは一番ベテランの主任リーダーが、月末に行われる後半のミーティングは主任としての経験が浅い私と診療内科の看護主任が毎月交代で担っている。


診療内科の看護主任は主任経験が二年目で、年齢も私より二つ上。
ただ、父親がうちの事務長という事もあって縁故入社らしく、主任達からは可愛がられている。


反して、私は看護師としての経験は八年になるものの、今の病院ではまだ三年目。
新人とまではいかなくても、他の科には私よりも長く働いている人や年上の人もいるから、私に対して嫌悪を抱く人もいただろう。


主任ミーティングに初めて参加した時には冷たい態度を取る人もいたし、初めて司会をした時には散々厳しい言葉を掛けられたりと、ひどく落ち込んだ事もあった。
中尾さんが手を差し延べてくれなければ、私は主任達の中で孤立していたかもしれない。


「正直な話、私は結木さんの司会の時が一番スムーズだと思っているのよ」

「そんな……。私なんてまだまだですよ」


微笑んだ中尾さんに謙遜しつつ頭を下げ、カンファレンスルームの鍵を返却する為に事務室に行った。

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