黒愛−kuroai−
 


私達が火花を散らしていると、柊也先輩が助けてくれた。



「亜子、ここで喧嘩は止めろ。
自販機でポカリ買って来て。はい、これお金ね」




先輩はその子を“亜子”と呼ぶ。

私は“愛美ちゃん”で、その子は呼び捨て。

おまけに頭をポンポン叩いて、親しげな態度…



自販機に向け走る彼女を、ついジットリと睨みつけてしまう。



「愛美ちゃん」



柊也先輩に呼ばれて、慌てて笑顔を作った。



「蜂蜜レモン、今は食べられない、ごめんね。
試合前に腹一杯にする訳にいかないしさ…
終わったら食うから」




差し入れ貰ってくれたけど…

今食べてくれない…



折角願いを込めて作ったのに。


これを食べたら優勝出来ると念じながら、


素手でネチャネチャと掻き混ぜたのに…






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