黒愛−kuroai−
 


 ◇◇◇


1月、冬休みが開け、今日は新学期初日。


菜緒が登校してきた時、私は珍しく本を読んでいた。


冬休みに図書室で借りた本が2冊。

タイトルは、

『私、結婚しました』
『ノサップ岬心中』



もう少しで読み終わるので、昼休みに返却に行く予定。



菜緒がコートを脱ぎ、苦笑いしながら言う。



「何て本読んでんのよ…
結婚と心中?両極端だね」




そうだろうか…

“結婚”と“心中”が対極にあると思えない。



冬休みの間、“究極の愛”とは何かと、ずっと考えていた。



結婚して愛する人の子供を産む。

それも愛の形。



愛に悩み、断崖絶壁から身を投げ、永遠に一つになる。

それも愛の形。



究極の愛がどんな形をしているのか、この本を読んでもまだ分からない。


でも…――




ページを捲る時、指を切ってしまった。


メスで切ったみたいに鋭利な切り口。


そこから真っ赤な血液が溢れ出し、人差し指を伝い流れ落ちる。




その血を舐めながら、菜緒に笑顔を向ける。




「結婚と心中、愛の形は違うけど、どっちも究極だと思わない?

ステキだよね…」




< 180 / 276 >

この作品をシェア

pagetop