黒愛−kuroai−
◇
その日の夜、遅くまで机に向かっていた。
手にしているのは、細い毛糸とカギ針。
真夏にマフラーを編んだりしない。
編んでいるのは“アミグルミ”
小さなパンダのマスコットだ。
「でーきた!」
編み上げたそれに綿を詰め、紐をつければ完成だ。
小さな二等身のパンダを手の平に乗せ、細部を点検した。
机の引き出しを開け、
ミニアルバムを取り出す。
100枚近い写真をパラパラと捲り、1枚の写真とパンダを見比べた。
うん、そっくり。
清宮鈴奈が鞄に付けているマスコットと同じに作れた。
ミニアルバムに収められた100枚の写真は、どれも清宮鈴奈の写真。
2週間の尾行の成果がここにある。
下校中の写真が多く、
仲の良い友人に囲まれ、駅に向け歩く彼女が写っている。
学生鞄の持ち手には、
いつもパンダのマスコットがぶら下がっていた。
いかにも手作りというソレは、柊也先輩も同じ物を持っている。
ミニアルバムのページを進め、ある写真をジットリと睨みつけた。
柊也先輩と彼女の休日のデート写真…
ショッピングモールで買物し、仲良くクレープなんて食べていた。