脱・不幸恋愛体質
まぁ、そんな毎日も意外と楽しくて、結構良いかなって思ったりしてるんだよね。

今日も相変わらずブスッとした蓮のとなりで、黙々とイカ焼きをしていた。


「手、まだ治らないのか?」


「あっ、うん」

火傷は早い処置のおかげでだいぶ治ってきたんだけど、まだ突っ張った感じがしてヒリヒリしていた。


――その時


「すいません」

と言うお客さんの声に反応し、私はとっさに笑顔で振り向いた。


「いらっしゃいま…せ……」


嘘……


辛うじて最後まで言い終わり、相手は気づいていない様子でメニューを見ていた。

華奢な癖して広い肩幅に、鎖骨にあるほくろ、左耳にしたリングのピアス……

随分と大人っぽくなったけど、見間違う筈が無い。


私の事を覚えて居るのだろうか?


そんな風に思いながら、半分逃げたい衝動に駆られていた。


「コーラとジンジャエールと、イカ焼き1つと……」


注文を聞く私と目が合った瞬間、その人は驚いた顔をしている。


やっぱり、覚えてたか。


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