番外編「雨に似ている」1話読み切り
「理久くん、交代しましょうか」

声をかけられ、千鶴さんの姿を見ながら仕事をできないのは寂しいが、やっと寒さから解放される嬉しさに声のトーンが上がる。


店内に引っ込むと店長が、「外にいる子達に珈琲持っていってやって」と優しいことを言う。


紙コップに珈琲を幾つか淹れトレイに乗せて、店先で売り子をしている店員達に手渡し、余分に淹れた珈琲を向かいの店先で、売り子をしている千鶴さんに手渡す。

「ありがとう」

とびきりの笑顔が戻ってきた。


うんいい、この笑顔。

そう思った。


外の作業を交代し、ポケットの中の使い捨てカイロが用済みになった。


「使いまわしだけど、まだ暖かいから」と千鶴さんの掌に握らせる。


時は来たり、タイミングは今しかない!






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