みあげればソラ


「ま、向こうもいろいろ前科があって、結局不起訴になったよ」

坂田は弘幸にそう告げた。

「強姦の正当防衛だろ、当たり前だ」

弘幸の不機嫌な声がそれに応えた。

「犯行に及んだのが利き腕じゃない左手だったのも幸いしたな。

出血はかなりあったが、傷が浅かった」

「いや、むしろ止めを刺せなくて残念だったよ」

「お前なぁ」

「今更まだミアに手を出そうなんて鬼畜にもほどがある」

「まぁ、そうだけどよ。

でも、ミアちゃん喋れるようになったんだろ?

荒療治ではあったが、結果オーライで良かったんじゃね?」

「お前なぁ、それを言うか?!

ミアがどんだけ怖い思いをして、罪を覚悟して抵抗したのか。

わかって言ってんのか?」

「いや、だって、ミアちゃん笑ってんじゃん」


二人の横で、二人の話を聞きながら美亜は嬉しそうに笑っていた。
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