みあげればソラ


「姉ちゃん、presidentって何?」

ダイニングテーブルに宿題を広げた太一が顔を上げた。

「……大統領でしょ。って、太一、自分で辞書ひきなさい!」

「だって、電子辞書、学校に忘れてきた」

「もう、仕方ないな……、姉ちゃんの貸したげる」

夕飯の下ごしらえをしていたキッチンから出て、沙希は居間に置いた自分のカバンを探って電子辞書を引っ張り出した。

「はい」

「さんきゅ」

「仲いいんだね」

キッチンから美亜が二人の様子を嬉しそうに見守っている。

クラブのない水曜と土曜の放課後、太一はこうして学校帰りに袴田家に寄ることが多くなった。

弘幸に言われたことを忠実に守り、太一は両親にきちんと承諾を得てここに居る。

「今日はカレーだけど、太一くんも食べてく?」

「えっ、いいんですか?」

「こらっ、太一!

ママが夕食作って待ってるでしょ!」

「残念でしたぁ〜

今晩は、母さんクラス会で外出でぇ〜す。

帰りにコンビニで弁当買って食べるように言われてんだ」

台所に立つ美亜に纏わり着くように、太一はカレーの鍋を嬉しそうに覗き込んだ。

< 148 / 207 >

この作品をシェア

pagetop