みあげればソラ


「由貴ちゃん、ほんと御免なさい」


深々と社長夫婦に頭を下げられて、由貴は言葉を失った。

「全ては社長のわたしが不甲斐ないばっかりで、本当に申し訳ない。

だが、これ以上引きずれば、かえって皆に迷惑かけることになると思ってね。

今なら、この工場を売り払って、僅かだが社員に退職金も払える。

家には家業を譲る子供もいないしね。

私達も、故郷の山形に戻って一から再出発することにしたんだ」

施設を出て、このオモチャ工場で働きだして丸二年。

敷地内に建てられた寮で寝起きして、一生懸命働いた。

社長夫婦、社員の人達、皆家族みたいで楽しく働かせてもらっていたのに。

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