みあげればソラ
バタン、と閉まった扉の前で、沙希は一人立ちすくんでいた。
「あたしが居たら恥かしいってこと?
あたしは家族に相応しくない?
あたしなんてこの家に必要ない?」
沙希の発した問いの答えは、恐らく全てイエスだった。
「そんなにあたしってダメ?!」
どんなに頑張っても一等になれなかった駆けっこも。
その他大勢に甘んじた学芸会も。
成績振るわず、やっと滑り込んだ私立の女学校も。
母にとって沙希は、恥かしくて人には見せられない不出来な娘だったのだ。
苦手な体育の授業もサボったことなどなかったし。
学校だってそれなりに楽しく過ごして友達も多かった。
高校では心機一転して、勉強だって頑張っていた。
成績だって中の上だ。
家の手伝いだって進んでしてきた。
自分のことで父母には迷惑をかけまいと、気丈に生きてきたつもりだ。
それでも母の満足は得られない。
あたしは恥かしい不出来な娘なんだ、と沙希は悟った。