みあげればソラ

重い足を引きずって、駅の階段を上る。

面接の度に都会に出ると、由貴はいつも居心地が悪く不快になった。

電車の窓に映る、冴えない自分の姿が直視できない。

無造作にくくった黒い髪、化粧っ気のない青白い顔、お下がりの身体に合わないスーツ。

華やかに着飾って、髪を染め、ネイルを施した白く綺麗な指先でスマホをいじる若者達と自分を比べ、由貴は落ち込んだ。

それは、住み込みで工場に居た時には感じなかった、世間への引け目。

自分は普通とは違う、という確信。

そして、面接の度に感じる蔑みの目。

単に施設育ちというだけでなく、由貴自身に引け目があることを見抜かれているのだ。

仕事に対する意欲や技量を求められても由貴には応える術がなかった。

由貴にとって仕事とは即ち生きる手段。

自分に出来ることなら内容なんてはっきりいってどうでも良かった。
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