みあげればソラ

『えっ、母さん海外取材なの?

不味いな、俺、連休中は忙しくて帰れないよ』

『えっ、なに? 女?』

『だったらなに?』

母さんには言われたくない、と弘幸は成田から電話してきた幸恵にウンザリした声で答えた。

『お金は渡してあるから困らないとは思うんだけど、ちょっと学校上手くいってないみたいだったから』

『わかった、俺、連絡してみる』

『うん、ありがと。頼りにしてるよ』

『ったく、無責任だよな。相変わらず』

『食べてく為には働かないとね』

『自分が現実から逃げたいだけだろ』

『どういう意味よ』

『まんまだよ。

しがらみから逃れて、海外で羽を伸ばしたいだけだろ』

『仕事だよ』

『仕事という名の趣味。いや麻薬かな』

『母親に対して酷いいいようじゃない』

『母親らしいことなんて数えるくらいしかしてねぇじゃん』

『産んであげた』

『そりゃどうも』

『十分でしょ』

『母さん、それそのまんま亜里寿に言える?』

『言えるわよ……、言わないけど』
< 71 / 207 >

この作品をシェア

pagetop