みあげればソラ


母親としての役目を息子に押し付けた自分。

仕事を言い訳に、娘の現実に向き合わなかった自分。

結果、息子に重い十字架を背負わせて、彼の人生を狂わせた自分。

幸恵はそんな自分が許せない。

「あんたはバカだよ」

弘幸にかけた言葉は、そのまま自分に向けたものだ。


愛がなかった訳じゃない。

子供を産んで、育てて。

共に歩んで来た道は、決して楽ではなかった。

それでもなんとかやってきた。

父親が居ない負い目。

それを指摘されるのは辛かった。

彼女にも女としての苦しみや葛藤があった。

でも、それを口にするのはた易いことではない。

未だ彼女はその苦しみや葛藤を克服できていないのだ。

だから、娘の亜里寿に向き合うことができなかった。

親として情けない。

後悔しても仕切れない。

いや、後悔しかできない自分が許せない。
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