ハッピーバースデイ
ぼーっとしていた。
私はクラスメートからの誘いは断った。
銀司の誕生日を祝うだけでクラスメートの殆どが集まるなんて、どんだけ人望が厚いんだ。
幼馴染のそんなことが自慢で、嬉しくて、意味もなく笑みが零れる。
でも、思うより上手く笑えない。
本屋さんに寄って好きな新刊のコーナーをうろつく。ハードカバーだった欲しかった本が文庫化していた。
映画になったのだ、欲しいな。
「お、葵ちゃん?」
聞き慣れた声がした。
「あ、佐月君」
まずい、と思った。