死の百物語と神は云う。
 ずんずんと俺の方に近付いてきた彼女は、周りに他の人がいるのもお構いなしで怒鳴り散らした。


「なによ、この女たち!私がいるっていうのに、浮気っ?!サイッテー!」


 1つ、誤解しないでほしいのは、俺に彼女はいないっていうこと。

 俺にとってアドレス帳の女の子たちは“全員ただの女友達”で、俺の周りにいた女の子たちも、俺に浮気だのどうのって怒鳴り散らしてきた彼女も、“ただの女友達”なんだよ。

 それなのに、何を勘違いしたのか、彼女は俺に浮気だ最低だーって怒鳴り散らしてきたワケだ。


「私とは遊びだったのね?!」

「アンタがそんな最低なヤツだとは思わなかったわっ!!!」

「ぶっ殺してやるっ!!!アンタも、他の女共も、みんなみんなっ、ぶっ殺してやるっ!!!」


 早口でまくし立てるようにそう叫ぶ彼女の手には、いつの間にか包丁が握りしめられていた。

 いつも持ち歩いているのか、たまたま持っていたのかは知らねぇけど、それを見た周りの他の人達は危険を察知し、警察を呼んだ。

 警察の人がくるまで、何度か身体を切られたけど……まぁ、それはそこまで重傷じゃないから大丈夫だった、かな?たしか。
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