だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版

残響...ザンキョウ






――――――――――――――……
―――――――――――――……




――――ピンポーン。


――――ピンポーン。




遠くでインターフォンの音がする。

それと、窓に何かが当たる音が。

バチバチと痛そうな音が。




そうか。

今日は湊の病室に泊まるんだっけ。

この雨の音が、静かな音よりはまし、なんて。



湊は本当に変わってる。

なんて湊らしい。




――――ピンポーン。

ピンポーン。





はっと目を覚ます。

温かい感覚はなく、私は一人でベッドの上にいた。

時計を見ると二十二時を過ぎている。




暗い部屋。

広いベッド。

大きな窓。

うるさい雨粒の音。




ここがホテルの部屋だと理解するのに、少しだけ時間がかかった。

この雨の音が、私をあの日に連れて行ってしまった。

苦しくて変な汗をかいている。



まだどこか現実に戻って来れないけれど、なんとか頭を整理する。



此処が何処か。

今が何時か。





ピンポーン。




部屋のインターフォンに慌てて部屋の電気をつける。

鏡で髪を整えて、軽く汗を拭う。

何も頼んでいないはずなのに、どうしてインターフォンが鳴っているのか理解できなくて、少し考えていた。




とりあえず、あまり待たせるわけにもいかず、ドアへと急いだ。




< 113 / 276 >

この作品をシェア

pagetop