だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版





「母さん、話があるんだけど」




湊がママに向かって真っ直ぐな目線で言った。

リビングのソファーに座っていたママが、ドアのところに立っている私たちのことを見ていた。

その表情は、少し強張った顔をしていた。




「座りなさい。潤さんはまだ帰って来ないから、先に聞くわ」




その言葉に、二人でママの向かい側のソファーに座る。

静かな空間の中で、私と湊が歩く音とソファーが沈む音がしていた。


少し下を向いて、目を逸らしていたママも、私たちが座るとこちらに視線を向けた。




今までに見たことのない、真剣なママの表情に握っている手に力が入る。

それと同じ力で、湊も握り返してくれた。


それだけで、気持ちが落ち着く。

私たちの気持ちをわかってもらおう、と頑張れる。



ママは、大きくため息をついた。

そして、私たちをじっと見つめていた。




「湊。時雨ちゃんは妹なのよ?」




ママの声は、決して私たちのことを祝福してくれる声ではなかった。

湊をじっと見つめるママの目。

笑っていないその目が、湊一人に注がれている。




「湊が時雨ちゃんを可愛がってるのは知ってたわ。見てればわかるもの。でも、あくまで兄妹として。血は繋がってなくても、兄妹なのよ」




< 241 / 276 >

この作品をシェア

pagetop