有界閉領域

五月祭

五月祭 初日





くたくたになるまで、毎日リハーサルしただけあって、初日の出だしは好調だ。







リョウも『めんどくせー』って言ってた割には、テキパキと代表として挨拶し、生徒と保護者からの受けも良い。








玲奈は、気を利かせてくれたのか、戸塚さんを連れて率先して、リョウのアシストをしてくれている。








だから、今のところ戸塚さんとは顔を合わさなくていい。




   



   ありがとう玲奈。







五月祭は基本、自由に学校を見て回って良いシステムだ。







でもより効率良く具体的に、学校を見て回りたい人は、在校生が案内する。








その窓口が真由の仕事だ。








先程も15人ぐらいのグループを作って、真由の補佐が案内しに出た。









混雑するだろうと会長と話し合った結果、受付時間を設ける事と真由の補佐も5人ほど増員した。








でも何故か補佐が3年のイケメン男子ばかり。








イケメンと言われる人達を選ぶところが会長らしいけどね。









『真由の下僕軍団』と千波に言われて笑ってはいけないのに、笑ってしまった。









その甲斐もあって女子中学生の申し込みが非常に多かったこと。








午前中は順調に終わり、午後も順調に進む。









圧倒的に女子が多いけど、受付終了時間まじかに4人のグループが申し込みにやってきた。









1人はリョウの出身中学の華彩中の制服を着たの女子、もう1人の女子は私服の中学生、1人の男子も私服の高校生かいや、中学生かな?もう1人も高校生?か兄妹??付き添いってところだろう。









「見学したいんですけど、いいですか?」







付き添いの男が真由に話しかけてきた。







時間内だし大丈夫なんだけど、今ちょうど補佐がいない!







「10分ほど待って頂ければ係りの者が来ますけど、いいいですか?」







真由の返事を聞いて、付き添いの男は、3人の所に行って相談しているようだ。







「あの、時間がちょっとないので、あなたが案内してくれませんか?受付時間も終わりでしょ?」







予定外の発言に真由はどうしようかしばらく迷った。







断るのも学校のイメージに良くない。







それにもう受付時間は終わる。







メモだけして案内に出ればいいか・・・・









「案内をする春日です。質問があればその都度、聞いてください」




  


   結局、案内する事にした。






「質問で~す~。春日さんは3年生ですかぁ?」







私服の女子がキャピキャピして聞いてくる。







どうでもいい事だから答えたくない。



   


   でも・・・これも仕事か・・・






「2年生です。」






「へ~ぇ。じゃ~もし入学したら1年は春日さんと過ごせるね~。綺麗な先輩と高校生life、キャ~憧れる~」




   


   はぁ~。疲れる。





「身長高いですけど、部活って何やってますか~?」



  

   とか






「彼氏は高校生?大学生?」



   とか









各教室を回っている間、ずっとこんな感じで2人の女子に全く関係のない質問を浴びせられ・・・ホトホト疲れる。





   ただ・・・
 





付き添いの男だけは、何も言わない分、ジロジロと必要以上に見てくる。








人に何となく見られるのは、小さい頃から慣れていたが、ここまで遠慮なしに見られると、流石に居心地が悪い。









もう1人の私服の男子は、華彩中の女子とカップルらしく、2人だけで会話している時もあった。









部活動の所まで案内しようとした時、







「私達、部活には興味ないのでそこはいいです。」







あっさり断られた。








「あんまり期待していなかったけど、意外といいかもよ?」







「ん~。私は、やっぱり白百合の方がいいかな~」








まだ全部回りきっていないのに、2人の女子は平気でこんな会話をする始末。




   


   うちに興味がないのなら、さっさと切り上げたい。







「あっ、ヤベ~。俺、塾があるからそろそろ帰るわ。」







私服の男子はそう言うと、3人に『またな~』と言って勝手に帰ってしまった。




  


    時間がないなら来るな!







思わずムッとしてしまう。







あの、トイレ行ってきていいですか?」







今度は私服の女子。







近くのトイレの場所を教えると2人でキャピキャピ言いながら向かって行った。








迷子になるといけないでの、トイレの近くで付き添いの男と待つ事に。








それにしても、ジロジロ見てくるこの男は、リョウぐらいは身長がある。







顔も好みじゃないけど一般的にイケメン。







黒髪がよく似合う、冷たいイメージのある精悍な顔立ち。







目が切れ長だから、冷たく感じるのだろうか・・・








「俺と、どこかで会った事ってある?」






「ないわよ。」




   


   この手のナンパは嫌い。






「さっきからずっと思い出そうと思うんだけど、絶対見たことある顔だって思ってさ。覚えない?」







「ありません!」




   


   自分の顔に自信のある奴って大体、同じセリフでナンパしてくるから、
本当、ムカつく。





   



   そのセリフを言えば、女が落とせるとか思っているのだろうか。



   
   


   もう・・・早く切り上げたい。








「美人は忘れないんだけどな・・・・おかしいな・・・」





 


    白々しく悩んでいる演技までするとは・・・・



    


    嫌な奴。



  



   一瞬、本当に会っていたかもって思ったじゃない!







「春日さん~、探したよ。」








3年の補佐の男子が、メモ書きを見てくれたのか探しに来てくれた。








「橘が、見送りに出るからさ。急いで。後は俺が案内するから」







「後は、お願いします」



   

   


   もうそんな時間?



   


   すっかり忘れてた。







最後に校門の所で、見学に来てくれた生徒をお見送りする行事が残っていた。







真由は、急いで校門に向かった。






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