彼氏契約書
仕事が出来て優しくて、何より、私を大事にしてくれた。

…付き合いを切り出してきたのは、雄一からだった。


その時は飛び跳ねるほど嬉しかった。

でも、付き合うと言う行為自体初めてだった私は、

どうしていいかわからず、やることなすこと失敗ばかりだった。

そんな私でも、雄一は可愛いと言って、愛してくれている。


…そう思っていた。


でも、半年が過ぎた頃、

オフィスに忘れ物をして取りに帰ると、

お約束のように、オフィスラブ現場に遭遇する。

…よりによって、社内Ⅰ可愛いと評判の女子社員と、雄一だった。


私はその場から逃げようとしたのに、これまたお約束のように、

足をデスクにぶつけてしまい、雄一がそれに気づいた。


「美緒、違う」

「・・・」

私は何も言わず、その場を走って出ていった。


その日の夜中。

私は一度だけ、雄一にメールした。

『さようなら』

その言葉だけ。

たった半年の付き合い。…私の初恋。

初恋は実らない、なんて誰かが言ってたっけ・・・
< 36 / 173 >

この作品をシェア

pagetop