吐き出す愛






 ――大人になるって、どういうことだろう。

 成人する頃には、きっと過去に夢見ていたような自分になれると思っていたけど。
 それは少し、違ったのかもしれない。

 見た目も、纏うオーラも、自分を確かにする心も。
 結局は努力して成長しようとしない限り、何一つ進歩しないんだ。

 私はその成長するための大事な過程を、殻に閉じ籠って過ごしたのかもしれない。理想ばかりを、胸に抱いて。

 だから20歳になっても私の心は、ずっとあの頃に置き去りなのだろう。

 自分の世界を守ろうとしていた、未熟な15歳のあの頃に……。



 金曜日の駅前通りを行き交う人の表情は、どれも活気で満ち溢れているように見えるから不思議だ。

 週末って1週間の疲れが溜まるピークの日のように思えるけど、みんなは違うのだろう。土日に向けて、少しずつ元気を取り戻しているみたいだった。

 まだ夕方の4時前。駅を利用している人の割合は学校が終わった学生が多いから、余計に休日である土日を迎えるのが楽しみなのかもしれない。

 私も同じ学生のはずなのに、弾ける笑顔がキラキラしていて眩しかった。そう感じるときはいつだって、自分が世間から浮いている気がする。

 取り残されてしまったような、寂しさが募るんだ。


「いらっしゃいませー」


 感傷にふけるような気分で外を歩く人の姿を見ていたけど、ふと店内によく響いた声で我に返った。

 振り返ってレジの方を向くと、ちょうど大学生らしきカップルが店内に入ってきたところだった。

 自動ドアが開いて吹き込んだ風によって、店内の空気が揺らぐ。コーヒーショップ独特の豆の香りが、ブラウンで統一された空間でふわふわと回っていた。


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