吐き出す愛
「信じろって言うけど、私はどんな有川くんを信じればいいの? 誰とでも軽々しく遊んだり付き合ってるような人の告白なんて、冗談としか思えないよ……」
また、あの胸の苦しさに襲われる。絞り出した声は、弱々しく震えていた。
有川くんは私を逃がさないように腕を掴んだまま、私の言葉に弁解を始める。
「……確かに俺は、軽いやつかもしれねー。けど、告白は冗談でも嘘でもない。本当にずっと、佳乃ちゃんが好きだったんだよ!」
「それが一番信じられないの! だっておかしいよ。好きな人がいるくせに別の人と付き合ったり出来るなんて、そんなの理解出来ない!」
「そ、それは……」
痛いところを突いたようで、有川くんの顔から覇気が失われていく。
何も言い返せないってことは、やっぱり私を本気で好きだったわけではないみたいだ。
私への告白も、所詮は安っぽい気持ちによるものだったんだね……。
それに確信を得ると、有川くんに関わってきた日々が急激に色褪せて見えた。
楽しかった思い出も、信じてみようと賭けた気持ちも。
全部、全部、音を立てて壊れていく。
その呆気なさに、身体全身が悲鳴を上げていた。
「……何で」
2人きりの冷たい空間に、有川くんの今にも泣き出しそうな声がポツリと落とされる。
恐る恐る表情を確かめると、意外なことに悲痛な面持ちだった。
どうして……そんな傷付いた顔をするの?
私ではなく、有川くんがそんな表情になる理由が分からない。
おまけに瞳に映る儚げな表情はいつか見たものに似ている気がして、余計に有川くんの心情が謎になる。
「……佳乃ちゃんなら、俺の本当の気持ちを信じてくれると思ってたのに」
そう言った有川くんの声は、今にも風に流されてしまいそうなほど頼りなかった。