さみしがりやのホットミルク
「……はぁ……」



その姿がドアの向こうに消えてから、思わず深いため息をついた。

彼女が指し示したドライヤーを手にとって、本体にくるくる巻いてあるコードを外していく。


──まさか、こんな展開になるなんて。今日家を飛び出した直後は、まったく想像していなかった。

つーか俺、なんで流されてんだよ。いくら向こうから誘ってきたからって、自分の勝手な事情に……それまで平穏に暮らしてた佳柄を巻き込むなんて、許されるはずないのに。


コンセントを差し込んでスイッチを押すと、勢い良く温風が出てくる。

髪を乾かしながら、これからのことを考えた。


……とりあえず明日は、学校に隠してた金を取りに行くか。

あの人たちは極力面倒事を避けたいと考えて、たぶん学校側に、俺が家出したこと言ってないだろうし……。

それにまだ、学校の外にも家の追っ手はいないはず。

学校行った後は、とりあえず着る物とか買いに行くか。……あのとき勢いで家飛び出したから、そのとき着てた制服と通学かばんしか、持ってきてないからな。


カチ、とドライヤーのスイッチをオフにして、テーブルの上に置いておく。どうせ佳柄も使うだろうから。

そうしてぼんやりテレビを観ていたら、ほどなくして洗面所の方から佳柄がやってきた。
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