さみしがりやのホットミルク
「……『このホットミルクには、さみしがりやがさみしくなくなる魔法がかけられています』」

「え?」



歌うように紡がれた彼女のせりふに、思わず目を瞬かせた。

そんな俺を見て、佳柄はイタズラっぽい笑みを浮かべる。



「あたしね、今はこんなだけど、小さい頃はさみしがりやの甘えん坊で……しょっちゅう、お母さんとお父さんを困らせてたみたいなんだよね」

「………」

「でね、そうやってあたしが駄々こねたときとか泣いたとき、よくお母さんが、そう言いながらカラメルホットミルクを作ってくれたの」

「へぇ……」



──『このホットミルクには、さみしがりやがさみしくなくなる魔法がかけられています』。

頭の中で先ほどの彼女の言葉を復唱して、なんだか自然と、笑みが浮かんだ。



「……おまえには、あんまり効果、なかったみたいだけど」

「ええ~? 何それ、そんなことないよ~!」

「いや、そんなことある」

「えええ~」



不満げに頬をふくらませる彼女に、また俺は笑って。

こんがり焼けたトーストへと、手を伸ばした。
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