さみしがりやのホットミルク
「わっ、」

「ひゃあっ」



前者は佳柄、後者は突然聞こえた高い声。

見ると彼女の目の前に、5歳くらいの男の子がしりもちをついていて。

視界の隅で捉えた記憶では、その男の子がよそ見しながら駆けて来て、彼女の足にぶつかったのだ。

そして運悪くその男の子の右手には、おそらくバニラ味のソフトクリーム。

彼女を見るとべったり、ジーンズにソフトクリームの白がついてしまっていた。



「か──」

「大丈夫っ?!」



俺が声を掛けるより先に、彼女は慌てたようにしりもちをつく男の子の前にかがんだ。

ジーンズについたソフトクリームなんて、まったく気にしていないようである。



「だ、だいじょうぶ……」

「そっか。よかったあ」

「でも、おねえちゃんの、ズボン……」



言いながらその子どもの顔が、くしゃりと泣きだしそうにゆがむ。

それを見た彼女はやさしい笑みを浮かべながら、よしよしと子どもの頭を撫でた。



「おねえちゃんは大丈夫だよー。それより、僕泣かなくてえらいねえ」

「うん。ゆうくん、おとこだからなかない」

「そっかあ。ゆうくん、かっこいいぞー」



にこにこ笑顔の佳柄にそう言われて、男の子も照れくさそうにはにかんだ。

するとそのタイミングで、子どもが走ってきた方向から「ゆうくん!」と女性の声。

やれやれ、これでこの場は収まりそうだと、俺は苦笑まじりに息をついた。
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