さみしがりやのホットミルク
「……ッ、」



そこまで思い返して、ふと、嫌な予感に心臓がどくんと音をたてた。

……オミくん、いつも通りだった。

だけど、どこか少しだけ。切ないような、何かを、堪えているような。

何かを、諦めている、ような──。



「ッおみ、くん、」



気付けばあたしは、ベッドから立ち上がっていた。

部屋の鍵と、スマホと、お財布。最低限の物だけ持って、玄関へと向かう。


……嫌な、予感がする。

大切なものが、離れていってしまうような、予感。

ドアを開けて外に出て、足早に階段を降りる。

きょろきょろあたりを見回しながら、彼が通るはずの道を歩いていると。前方から、なんだかガラの悪そうな男の人がふたり、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。

なるべく関わり合いにならないようにと、うつむき加減に、すれ違いかけたとき。



「……んだよ、あのガキ、まさかあの家の奴とは──」

「何発かボコっちまったけど、大丈夫だよな?」

「知らねぇよ、普通に高校生やってるみたいだったし、まだ『シゴト』は手ぇ出してねぇんじゃねぇの?」


「──ッ、」



バッと後ろを振り返って、その男の人たちを見る。

……ガラの悪そうな、ふたり組。『ボコった』、『高校生』って、言ってた。

どくん、どくん。

心臓が、大きく鳴る。



「……オミくん……っ!」



あたしは堪らず、また前を向いて、走り出した。
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