「秘密」優しい帰り道【完】
「試験は3月2日だろ」
「うん」
「その前に、そのお守り買った神社に一緒に行くか?」
えっ.......
凪くんはバッグを肩にかけなおした。
私は一度空を見上げた。
行きたい。
ちゃんと気持ちに整理をつけるから、
行かせて........
「うん」
凪くんがマフラーの中に指を滑らせて、
私の頬を撫でた。
じっと私を見つめているその大きくて綺麗な瞳に、
私は.........映っていない。
「じゃあな」
凪くんは頬から手を離して、向きを変えて土手を戻って行った。
土手を歩く後ろ姿を見て、
涙がじんわりとあふれてきた。
私が違う顔だったら、
どうだったのかな.......
希未さんに似ていなかったら、
一緒にいてくれなかったのかな......
こんなに優しくしてもらえなかったのかな.......
私.......希未さんよりも前に凪くんに出会いたかった。
そうしたら、私を好きになってくれたかもしれない。
ちゃんと私をくるみとして、
手を繋いでくれる
頬を撫でてくれる
スロープの前で凪くんが振り向いた。
「私を、好きになってほしかった.......」
小さくつぶやいて、大きく手を振った。
凪くんはスロープを下りて、
私から凪くんが見えなくなった。