海辺の元で
翌朝、昨日の疲れがとれないまま家を出る。
もちろん、父も母もいない。
昨日、店で会ったっきり会ってない。
私はずっと寝ていて、父も母も数時間寝て、また店に行った。

私がドアを開くと、いつもの働く姿があった。
朝食を取り、申し送りが始まった。
「今日は、特別なお客さんが来る!」
父が力を込めて言った。

「純平君のご夫妻だ。
くれぐれも失礼のないように。」

「はい!!!」

そして今日も始まった。

純平の両親は、店の一番暇な時に来た。

「あっ!おじさまぁ〜おばさま!お待ちしておりましたぁ!」

「おぉ!雪乃ちゃん、久しぶり。」

おじさまは、優しく微笑んだ。

「雪乃ちゃん、元気だった?」
「はい!元気です!」

「純平、ちゃんと働いてるかしら?」
おばさんが純平を見ながら言った。
「あぁ〜、そぅですねぇ〜」
私は、曖昧な言い方をする。

すると、純平がすかさず

「なんだよ!その言い方はよ!ちゃんと働いてるだろ?」
「 はっはっはっ!」

おじさまは、私達を見て笑った。おばさまも。

「まったく!雪乃!
純平君、とっても働き者で助かってますよ!」

母が言った。

「西島さんには、当店のスペシャルメニューを召しあがって頂きます。
どうぞ♪」

父は、仲良く西島夫妻とテーブルで話に行った。

「雪乃ちゃんも可愛くなったなぁ。」

「いやぁ、まったく、わがままな娘で。」
父が、申し訳なさそうに言う。

「店が順調なようで何よりだよ!」

「えぇ…まぁ。」
歯切れの悪い言い方をした。
純平の父・和良は、不審に思った。
「どうした?」

「いえ、大丈夫です。おかげ様で繁盛してます!」

「そうか、良かった。良かった!」
その不審も、すぐに消えた。
その時は、深く考えていなかったから。
この時、海辺のレストラン丘崎家に起こっていた大変な事があろうとは、思いもよらなかったから…。

そして、私も。

純平も。

< 6 / 30 >

この作品をシェア

pagetop